大会レポート           大会結果           対戦成績表           決勝戦棋譜           Photo Gallery           大会前の案内頁          





棋譜記録係として決勝戦に立ち会った清水さんからのレポート。




去る4月3日と4日、第15回全米将棋選手権、全米アマ竜王戦大会が、ウォール街のCLUB QUARTERSというホテルを会場に開催されました。

毎年アメリカ各支部が持ち回りで主催している本大会、今年は5年振りのニューヨークでの開催です。

5年振りと言っても、我々ニューヨーク将棋クラブは去年の秋に世界大会を主催したばかりですので、「またか」という弱気になるところを「もう一踏ん張り」という気持ちに切り替えて準備を進め、開催に漕ぎ着けました。

今大会にはロスから6人、サンフランシスコから4人、シカゴから5人、その他の地域から7人、とたくさんの方々に参加して頂きました。皆さんありがとうございました。地元ニューヨークからの参加者12人を加えて総勢34人。おかげさまで盛会となりました。

大会審判長として、日本からはニューヨーク将棋クラブの顧問でもある石川陽生7段をお迎えしました。先生いつもありがとうございます。

また、日曜日の午前に共催された子供大会には、14人もの小中学生達が参加してくれました。日頃、補習校で子供達に将棋を指導するなど、普及活動に力を入れているクラブメンバーにとっては嬉しい限りです。付き添いのご家族の方々、ありがとうございました。

さらに、今回ニューヨークのJTB International社には場所、値段とも好条件の最適なホテルを探してもらい、その上会場使用のスポンサーとなっていただきました。お世話になった土江支店長およびエリザベスさん、大変ありがとうございました。

数日前まで冷たい雨が降り続いていたニューヨークですが(実際3月の降雨量は観測史上最高を記録したそうです)当日は雲一つなく晴れ渡り、束の間ではありますが、皆さん当地の春を楽しんで頂けたのではないかと思います。

大会は土曜日の朝9時頃始まりました。ほとんどの皆さんが何度も参加していますので、競技大会である以上あくまで真剣勝負ですが、和気あいあいとした雰囲気の中、まずは個人戦の予選です。抽選で、同じ地域の参加者がいきなりぶつからないよう配慮しつつ、4人一組になってリーグ戦を行い、各組上位2名がAクラス、下位2名がBクラスに振り分けられます。

将棋の世界は階級社会です。AクラスとBクラスでは、今年日本で話題の「龍馬伝」になぞらえると、土佐藩の上士と下士くらいの差があります。Bクラスの人間は大会中、Aクラスの人に頭が上がりません。道も席も譲らなくてはなりません。口答えなどもってのほかです。そんなことはありませんでしたか?!!

格付けを終えてランチです。金融世界の中心地、ウォール街の土曜日が、こんなに人が居ないものだとは、長年ニューヨークに住んでいて初めて知りました。がらん洞です。遺跡の中を歩いているようです。レストランもたいがい閉まっています。SOUTH STREET SEAPORT まで足を伸ばせば色々お店もありますし、歩いて10分もかかりませんが、昼食休憩は1時間しかありません。結果、皆さん近所のデリでサンドイッチを頬張るなどして、せっかくマンハッタンにいるのにちょっと味気ないランチになってしまったかも知れません。

気を取り直して、午後は支部対抗団体戦です。個人参加の方々には混成チームを作っていただきます。各チーム5人、持ち時間10分、切れたら一手20秒の早指しです。4勝1敗でロスが優勝しました。ロスチームは5人のうち4人がAクラス進出者ですから、誰もが納得の優勝です。ロスのみなさんおめでとうございました。

夜はみんなでミッドタウンまで足を伸ばしました。この季節は7時でもまだ明るいです。丁度復活祭の週末だったので、教会が色とりどりの花で飾られていました。日曜日には大きなパレードもあったそうです。天気が良くて本当によかったです。

グランドセントラル駅からのんびり歩いて10分、Don Veitia というレストランで歓迎夕食会です。38人もの団体を気持ち良くもてなしてくれました。メニューは前菜がスープかサラダ、メインは鱈、鶏、ステーキからチョイスです。ニューヨークの物価とレストランの相場を考えると、なかなかCPの高いディナーを提供できたと思うのですが、皆さん気に入って頂けたでしょうか。しかも当初は飲み物は2杯目以降各自個人払いとしていたのに、店側の好意で合わせて数十杯分を無料にしてもらい、おかげでドリンク代を追加徴収せずに済みました。この場を借りてお店にお礼を言わせて頂きたいと思います。Thank you, Bob! (^~^)/



夕食後は、皆さん思い思いの時間を過ごされたことと思います。カラオケに行かれたグループもありました。皆さん事故も無く良かったです。

明けて日曜日の朝からは、いよいよ個人のトーナメント戦です。Aクラス、Bクラスで1回戦を行い、敗者は両クラス合わせた敗者復活戦に参加します。という訳で、都合3つのトーナメントができることになります。

特筆させて頂きたいのは、Bクラストーナメントに出場したニューヨーク将棋クラブの石田さんです。一昨年のシカゴ大会での優勝者 アラン ベイカーさん、チェスのインターナショナルマスターでもあり、昨年ニューヨークで行われた世界大会ではベスト4にまでなったレイモンド カウフマンさんを連破してしまいました。雪が降るかと思いました。ニューヨーク大会における奇跡として、長く語り継がれるかもしれません。

そのBクラスの決勝は、ニューヨーク勢同士の対決となり梶浦4段が荻原4段を敗って優勝しました。

敗者復活戦では、去年の全米チャンピオンであるシカゴの野沢さんが、ノースカロライナで唯一人将棋を指している東恩納さんに勝って優勝しました。おめでとうございます。

それにしても一昨年の全米チャンピオンがAクラスに残れず、しかもBクラスで初戦敗退、昨年のチャンピオンがAクラス初戦敗退とは、群雄割拠、玉石混淆、生き馬の目を抜く街ニューヨークにふさわしい激戦です。

切りのいいところでまたしてもランチです。前日に続き、といいますか、続いたので余計に寂しいランチです。デリがまた、ええっと思わず声が出る位高いです。ぼったくりです。定価で売っているのかも知れませんが、その定価がぼったくりです。なんだか皆さんに申し訳ない気がします。

午後は大会のハイライト、Aクラス個人戦決勝です。元アマ竜王というとてつもない実力者であるサンフランの東野さんと、アトランタの風と共に去りぬ二神さん。奇しくもお二人とも奥様同伴です。大きな会場の一角を備え付けのシェードで隔てて別室を作り、据え置きのビデオカメラで指し手を隣室に中継して、石川先生に大盤解説していただきました。またこの一局はネットの将棋クラブ24にも配信されました。

石川先生の解説が両対局者に聞こえてしまわないかちょっと心配でしたが、実際はほんの少し声がするという程度で、対局者のお二人はもとよりそのようなことに心を惑わされるような未熟な方達ではありません。

心地よく張りつめた空気の中、決勝戦は始まりました。

東野さんの先手です。7六歩、3四歩、2六歩、4四歩、4八銀のよくある出だしで、二神さんが飛車を振るかと思いきや、6二銀として相居飛車になりました。それから2五歩、3三角、5六歩、3二金と、まあしばらく駒組が続くのかと見ていたら、東野さんの次の一手には驚きました。7八銀。強い人の将棋はやはり違います。次の7九角から、飛車先切りの角交換が、後手に避けようがありません。もちろんそれでいきなり優劣がつくということはないでしょうが、後手としては不本意に違いありません。一手前、何気なく見えた5六歩は、何気ないどころか、確かな狙いを持った手なのでした。そして、ではその5六歩とされた時点で、後手に先手の狙いを阻止する手があるのかというと、捜しましたが見つかりません。無いとすると、その前の2六歩、3三角の交換は必然ですから、そのまた前の後手の6二銀が疑問手ということなってしまいます。しかしこれ、開始6手目が疑問手、などということがあるのでしょうか。どなたか教えてください。

将棋の対局中、一心に読みふけっている姿は誰でも美しいものですが、強い人は尚更です。二神さんは禅僧のようでした。東野さんが考えている横顔には凄みさえ感じます。あれほど真剣な眼差しで、今日のランチはしょぼかったなあなどと考えていらしたら本当に怖いです。

83手をもって二神さんが投了されました。詳しくは全米大会決勝戦棋譜をご覧ください。二神さんにとっては残念でしたが、東野さんに勝つというのは、素手でライオンを倒そうとするようなものかも知れません。お二人ともお疲れさまでした。そして優勝と準優勝、おめでとうございます。

決勝を終えてすぐに表彰式と閉会式。帰りの飛行機の都合で急ぐ方達も居ますのでてきぱき済ませます。

皆さんお帰りになられたあと、我々は後片付けを済ませてホテルのバーでとにかくまず乾杯しました。このビールのなんとおいしかったことでしょう。それから場所を行きつけの店に移して、石川先生を囲んでまた乾杯しました。

皆さんお疲れさまでした。

無事にご帰宅されましたでしょうか。

来年もよろしくお願い致します。

また、アメリカにお住まいで、将棋が好きな方、まだ大会に参加したことの無い方、来年是非参加してください。どこかの支部に所属していなくても大丈夫、個人参加大歓迎です。

これを読んだ方のどなたか、一人でも、来年の大会に参加してみようかと思ってくだされば、これ以上の喜びはありません。

それでは皆さん、また来年、アメリカのどこかで、元気に会いましょう。チャオ!